座ることのできないかたちに座る
球形という“座ることのできない象徴的なかたち”を二つに分けることで、この椅子は座るための機能を獲得します。二つのパーツを重ね合わせると、その形は再び球形という象徴的な形態へと戻ります。
この開閉による形状の変化は、単なる機能の切り替えではなく、「座る」という行為そのものを意識させるための構造でもあります。さらに、この椅子は球面を底としているため、誰かが座ったあともしばらくゆらゆらと揺れ続けます。その揺れは、そこに人がいた時間や気配を感じさせ、座る前後にある出来事や、再び開いて使われる未来を想起させます。機能と象徴のあいだを往復しながら、椅子という存在に時間的な体験を与えることを試みたプロジェクトです。
本作では、構想から設計、制作までを一貫して行いました。形態と体験の関係を検証するため、図面上での検討にとどまらず、実際に制作することで、構造、重量、揺れ方、身体との接触といった要素を確かめながら形を調整しました。
ここでいう機能とは、単なる利便性や使用目的の達成にとどまらず、身体の感覚や情動にまで作用し、体験そのものを立ち上げる働きまでを含んでいます。
Type
Personal Project / Research
Material
FRP
Photography
Takeru Ikeda
Year
2023